困難なDataMatrixコードの読取を解決!【サポート事例】

つぶつぶコラム

はじめに

製造現場における効率化と品質管理において、バーコードリーダーは不可欠なツールです。ヒューマンエラー(入力ミス、誤出荷など)の大幅削減、入出庫・在庫管理・工程進捗把握の自動化と高速化、リアルタイムでのデータ可視化による生産性向上とコスト削減など、様々なメリットがあります。

しかし、印刷不良や破損などのバーコード自体の問題や照明などの読取環境・操作の問題などの要因により、バーコードの読取が困難になるケースも少なくありません。

○主な要因
1.バーコード自体の問題
・破損・汚損:傷、破れ、汚れなど
・印刷不良:低解像度・かすれ、コントラスト不足、にじみ・ぶれ、など
・デザイン・配置不良:余白(クワイエットゾーン)不足、サイズが不適切、など

2.読取環境・操作の問題
・光の反射・照明:強い光の反射、暗すぎる・明るすぎる環境、など
・読取角度・距離:角度のずれ、不適切な距離、など
・リーダー側の問題:機器の故障、レンズの汚れ、など

これらの要因が複合的に絡み合うことで、解決に時間がかかるケースも発生します。
本コラムでは、サポート事例の一つとして、「DataMatrixコードが読み取れない」という問合せを受け、どう解決していったのかを紹介します。

課題:読み取れないDataMatrixコード

開発中の製品に組み込むために評価提供していた「GR-DataMatrix/DECODER」の評価中に、読み取れない画像がある、というご相談を受けました。

読み取れない画像を提供いただき当社でも確認したところWindowsシミュレータでも読み取ることができず、パラメータ調整だけでは解決できない状況でした。

追加情報を受け、詳細な調査の結果、読み取れない原因は主に以下の2点にあることが判明しました。

  1. 画像の鏡像化: 通常とは異なり、画像が左右または上下に反転している。
  2. 画像サイズの小ささ: バーコードのモジュールが小さく、解像度が不足している。

さらに、以下の問題も確認されました。

  • 低コントラストとノイズ: 全体的に画像の質が低く、デコードが困難。
  • 明度のムラ: 画面全体で明るさにばらつきがあり、一つの閾値ではデコードができない。

これらの複合的な要因が、DataMatrixコードの安定した読取を妨げていました。

アプローチ:密な連携とコンサルティング

まず、画像が鏡像であることやサイズが小さいことに対する反転・拡大処理を提案しましたが、それでもなお、読取が難しい状況が続きました。電話やZoomでの会議を重ね、お客様の状況を確認する中で、今回は明度のムラが最大の課題であることが判明しました。

そこで、当社は以下の対策を実施しました。

  • 明度平滑化処理(自然光除去)を実施

画像全体の明るさのムラを解消する「明度平滑化処理(自然光除去)」を行ってみたところ、コントラストの低い画像でもコードが読み取れることが確認できました。シミュレータでの実演にてその有効性を示しました。

明度平滑化処理前 
明度平滑化処理後

解決策:画像処理技術による読み取りを実現

  • 前処理モジュールの提供

お客様のシステムに組み込めるよう、明度平滑化処理を含む画像前処理のサンプルモジュール(GrFxSample)とアルゴリズムの解説資料を提供しました。

お客様の状況を深く理解し、最適な調整方法や光学系の改善についてもアドバイスを行うことで、単なる製品提供に留まらない、お客様の現状に合わせた深い技術サポートが可能となりました。

まとめ

単に製品を提供するだけでなく、評価終了までサポートを行うことで、お客様の抱える具体的な技術課題に対し、当社の専門知識と画像処理技術を駆使して深くコミットできた一例となりました。

今後も、密なコミュニケーションを通じて、信頼関係の構築と問題解決を加速させ、お客様のビジネスの発展に貢献してまいります。